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結婚愛 521

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44 天界や教会の何らかのものを認めない意図と確信からの姦淫者について

521 (これらに次のメモラビリアを加えます——)
私に目が開かれ、私は暗い森を、そこにサテュロスの群れを見た。
サテュロスは、胸は毛むくじゃら、足は、ある者は子牛、ある者はヒョウ、ある者はオオカミのようであり、足底は指の代わりに野獣のような爪であった。
これらの者が、「女はどこにいるか?」と叫んで、野獣のように駆け回っていた。
その時、彼らを待っていた娼婦たちが見られた——それらもまたいろいろな怪物であった。
サテュロスたちは走り寄り、彼女たちをつかまえ、森の真ん中に、地の下の深い洞穴へ引き下ろした。洞穴のまわりの地上に、らせん形に屈曲した大きなヘビが横たわっていて、洞穴の中へ毒を吹き込んでいた。ヘビの上方の森の枝に、死を招く(不吉な)夜の鳥(フクロウ)がガーガー鳴き、叫んでいた。
しかしサテュロスと娼婦たちはこれらを見なかった、彼らの好色に対応するものであったからである、いつもの外観が遠方からこのように見られる。
[2]その後、洞穴から出て、ある低い小屋へ入った、それは売春宿であった。その時、娼婦たちから引き離され、自分たちの間で話した、それへ私は耳を向けた。というのは、話しは霊界で、そこの空間の広がりは単なる外観であるので、遠く離れたところからでも、居合わせるかのように聞かれることができるからである。
彼らは、結婚について、自然について、宗教について話していた。
結婚について、足が子牛のように見られた者が話し、「結婚は許された姦淫でないなら何か? 淫行の偽善、そして夫たちを欺くこと以上に何が心地よいか?」と言った。
これらに、他の者たちは高笑いして、拍手喝采した。
自然について、足がヒョウのように見られたサテュロスが話し、「自然以外に他の何があるのか? 人間が明晰な発音で、獣が音声で話すことができること以外に、人間と獣の間に何の違いがあるのか? 両方とも自然の働きであり、熱からのいのちが、そして光から理解力があるのではないのか?」と言った。
これらに、他の者たちは叫んだ、「ああ、あなたがたは思慮分別から話している」。
宗教について、足がオオカミのように見られた者が話し、「自然の最内部の働きでないなら、何が神か、または神性か? 大衆を捕え、縛るための作り事でないなら、何が宗教か?」と言った。
これらに、他の者たちは叫んだ、「ブラボー(いいぞ)」。
[3]ほんの短い時間の後、彼らは勢いよく出て来た。勢いよく出て来ながら、彼らに向けて目を集中させて眺めている私を遠方から見た。そのことから怒って森から走り出て、脅迫的な顔つきで私に向かって走り急いだ。
彼らは言った、「なぜ、ここにあなたは立って、あなたは私たちのひそひそ話しを聞いているのか?」
私は答えた、「なぜ、いけないのですか? 何が禁じられているのですか? 〔ひそひそ話しではなく、単に〕話しでした」。私は、彼らから聞いたものを話した。
このことから彼らの心(アニムス)は座らされた、これは〔自分たちの話しが〕漏れないようにとの恐れからであった。その時、謙虚に話し、礼儀正しく振る舞い始めた。そのことから私は、卑しい庶民からでなく、さらに高貴な家系からの者であったことを認めた。
その時、私は彼らに、私が森の中の彼らを数で三十人のサテュロスとして、二十人を子牛のサテュロスとして、六人をヒョウのサテュロスとして、また四人をオオカミのサテュロスとして見たことを語った。
[4]彼らはこのことに驚いた、まさに自分自身を、私のもとでここに自分自身を見ているのと同様、人間としてしか見なかったからである。
私は、遠方から淫行の情欲からそのように見えること、サテュロスのこの形は放埓な姦淫の形であり、人物の形ではないことを教えた。私はこの理由を言った、「それぞれの悪の欲望は、ある形の中に自分と似ているものを見せます、それは自分自身から眺められません、しかし、隔てて立っている者から眺められます」——また、言った、「あなたがたが信じるために、あなたがたからある者をその森へ送り出し、そしてあなたがたはここにとどまり、観察してみなさい」。
そして、そのように行なわれ、ふたりを送り出した。その売春宿の小屋の近くで、そのふたりがまったくサテュロスのようであるのを見た。戻ったとき、彼らはそのサテュロスに挨拶し、言った、「おお、何たる笑いもの」。
笑いの中にいたとき、私は彼らにいろいろな冗談を言い、私が姦淫者をブタとして見たことも語った。その時、私はオデュッセイアとキルケーについての寓話を思い出した、このオデュッセイアの仲間と召使いは、ヘカテーの草〔=魔女の薬草〕を振りかけ、魔法の棒で触れて、ブタに変えたが、おそらく、姦淫者に〔変えたのであろう〕、どんな技巧であっても、ある者をブタに変えることはできなかったからである。
これらや同様のものに高笑いした後に、私は、彼らが世でどの王国の出身であったか質問した。
彼らは、いろいろな国からであったことを言い、イタリア・ポーランド・ドイツ・イギリス・スウェーデンの名前を挙げた。
私は、自分たちの間にオランダからの者を見たか質問した。「だれも見ない」と言った。
[5]この後、私は話題をまじめなものに変え、これまでに姦淫が罪であることを考えたか質問した。答えた、「罪とは何か? 私たちはこれが何か知らない」。
私は、これまでに姦淫が十戒の第六の戒めに反すると記憶したことがあるのではないのか質問した。答えた、「十戒とは何か? 教理問答書なのか? 私たちおとなにその子どもじみた小著と何〔の関係〕があるというのか?」
私は、これまでに地獄について何か考えたか質問した。答えた、「だれがここから上ったか、また語ったか?」
私は、死後の生活について世で何か考えたか質問した。彼らは言った、「獣のいのちと同様のもの、また時々は、幽霊のいのちと同様のものと考えた、それはもし死体から発散されるなら、消滅する」。
さらに私は、これらやそれらについて何らかのものを聖職者から聞いたのではないかと質問した。彼らの話しの音声だけに留意し、事柄に留意しない、「また、これが何か?」と答えた。
[6]これらに驚き、私は彼らに言った、「顔とまなざしを森の真ん中へ、その中にあなたがたがいたそこの洞穴へ向けなさい」。彼らは向けた、そしてそのまわりにらせん形に屈曲し、そして毒を吹き込んだその大きなヘビを、そしてまたその上方の枝に死をもたらす鳥を見た。
私は質問した、「あなたがたは何を見ますか?」しかし怖くなって、何も答えなかった。
私は言った、「あなたがたは恐ろしいものを見ませんでしたか? これは姦淫の情欲の中の邪悪な行為を表象するものであることを知りなさい」。
突然、その時、ある天使がそばに立った。聖職者であった。彼は西の方位に、最後にこのような者が集められる地獄を開い〔て見せ〕た。また、言った、「それを眺めなさい」。彼らは火のような湖を見た。そこに世で友人であった者を認めた、その者は彼らを自分のもとに招いた。
これらを見て、聞いて、向きを変え、私の視野から飛び出し、森から去った。しかし私は彼らの歩き振りを観察した。彼らは去ることを装ったが、回り道を通って森の中へ戻った。